「……。」

「…紫衣」

ゆっくり私の肩から離れた。

目を合わせる、ドクンドクンと心臓は鳴り続けてる。

「…っ」

「髪に鰹節付けてんじゃねぇーよっ!」

「…え?」

これ以上無理ってぐらい眉をつり上げて、ガンッと思いっきり睨まれた。

「髪にってなんだよ!?どこで食う気だったんだよ!子供かっ!!」

髪にかつお節って…?かつお節…?

“たこ焼き食べるー?ベビーカステラのお礼に!”

「あーーーーっ」

あれだあの時付いたんだ!!

それを柏木先輩が取ってくれようとして…
え、待ってめちゃくちゃ恥ずかしい!

「どうせ食い意地張ってたんだろ、みっともねぇなァ」

「はぁーっ!?なんでそこまで言われなきゃいけないの!?」

「ベビーカステラだって空っぽじゃねぇか」

「それはみんなにあげたの!てゆーかケイこそ見境なさ過ぎない!?」

誰もいないことをいいことについ言い合っちゃって声はどんどん大きくなった。

だって私を怒らせるようなことしか言わないんだから、こーゆうとこほんとむかつく!

「あんな人がいる前で何してるの!?やめてよね!!」

自分本位で私のことなんかちっとも考えてないんっ


「紫衣になんかあったら遅いんだよっ!!」


だから…っ

て思ってたのに、そんな真剣な顔で言わないよ。

口が開いたまま変な顔しちゃったじゃん。

一気に顔が赤くなっちゃった。

なんでそんなこと言うの…

「何もないよ、だってあれだけ学校の人たちがいる前で柏木先輩だって何もしないよ」

「そんなのわかんねぇだろ、何があるかわかんねぇんだあってからじゃ意味ないんだよ」

あまりに目に力を入れて言うから、髪の毛にかつお節が付いてたことよりも恥ずかしくて前髪を触るフリをして手で顔を隠した。

そんな言葉面と向かって言われたら…


ドォン…ッ 


川の向こう側、遠くの方から花火が上がった。

音につられて体ごと向きを変える。

遠くからでも空いっぱいに広がる花火はキレイできらびやかだった。

あんなに言い合ってたのに2人とも静かになっちゃって、ただひたすら花火を見てた。


何も言わずにずっと…


ずっと手は繋いだままだった。



離そうと思えば離せたのに、なぜか離せなかった。