ケイが現れる時はいつも柏木先輩がいた。


それがなんとなく原因だとは思っていたけど、こんなにも深くて苦しいものだなんて思ってなかった。



彗くんはどんな思いを抱えてたのかな?



「紫衣ちゃん紫衣ちゃん!見て取れた!!」

W型の釣り針に引っかかった紫色の水ヨーヨーを満面の笑みで見せてくれた。これはさっき私が欲しいってお願いしたやつ、夏祭りに来るとなぜだか欲しくなっちゃうんだ。

「彗くんすごい!」

「これ紫衣ちゃんにあげるね」

「わーい、ありがとう!」

水ヨーヨーの浮かぶ水槽の前でしゃがんで見ている私に針から外して渡してくれた。
淡い紫色の水ヨーヨーは風流で夜店の風物詩って感じする、取ってもらえて嬉しい。

彗くんと夏祭りは初めてだったから、この日のために浴衣も買って、髪の毛は頭の上に大きなお団子を作って髪飾りも着けて来た。張り切って準備して来ちゃった。

「かわいい紫…」

…張り切って来たのには彗くんとの夏祭りがすっごく楽しみだったのはもちろんなんだけど、そうやって気分を上げなきゃって気もしてたから。

彗くんは甚平を着ていた。


それはどっちか選んだの?


彗くんといて、楽しんでていいの?

喜んでていいの?

笑ってていいの?


彗くんは…

私の前で楽しそうに笑ってる。


「紫衣ちゃん?どうかした?」

「え、なんで?」

「なんか…今日元気なくない?」

「そんなことないよ!だって彗くんと一緒なんだよ、超元気だよ!」

歯を見せながらいーっぱい笑って見せた。

楽しいはずなのに、なぜか楽しくないそんな気がしててなんか…