「しーえちゃんっ、お昼食べよ~!」

体育祭実行委員の仕事をし終えた私を彗くんが呼びに来た。

これは正真正銘の彗くん、こんなきゅるんとした可愛い彗くん他にいないもん♡

「食べよ!どこで食べる?」

「んーっとねぇ~、どこがいいかな~?中庭は?」

「いいよ、行ってみよ!」

「まだベンチあるかな!?」

「あるといいな~!」

うちの学校の中庭には石でできたテーブルとベンチがいくつかある、早い者勝ちだけどあんまり外で食べる人がいないから穴場なんだ。

教室にお弁当を取りに行ってまた外へ…がめんどくさくてやっぱり中庭は空いていた。 

「紫衣ちゃん実行委員の仕事大変だね」

長方形の石のテーブルに横並びで座った。

「ちょっとだけだよ」

その分ほっとんど競技には出てないから、てゆーか午前中1つも出てなかったりする。

「彗くんもしてるでしょ?実行委員の仕事!」

「オレはレース中コースアウトしないか見張る係だから、ただトラックの内側でぼぉーっと立ってるだけだよ」

「えー、でも係りの仕事しながらいっぱい出てるもんね」

「そう!」

コンビニのコロッケパンを食べようとして大きな口を開けた彗くんがかぶりつくのをやめてそのまま声を出した。

「オレ1位だった~!」 

「…!」

にぱぁっと笑って私を見る。

「うん!彗くんすごかった!」

律儀にコロッケパンを袋にしまって、ちょこんっと背筋を伸ばした。

「紫衣ちゃんがゴールの前で待っててくれたおかげだね」

私の目を見つめながら、優しく微笑む。

「……。」

そんな目で見つめられるの…

恥ずかしくてドキッてするけど、それよりもズキンッて胸が鳴る方が気になった。

彗くんの中にはちゃんと体育祭と記憶があるんだ、私との体育祭の記憶が。

本当に記憶操作ってできるんだね、すごいな。

でも少しだけモヤモヤしちゃった。