パブリックダーリン~私と彼と彼氏~

「彗の記憶を好きなように書き換えることが出来るんだよ、俺がこっち側にいる間眠ってる彗に何があったかをあたかも彗が経験したかのようにな」

ずっと何を言ってるのかわからなかったけど、こんなにも理解したくないことはなかったかもしれないよ。

「彗といた記憶が欲しいんだろ?じゃあそうしといてやる、そんなの簡単だからな」

はーぁと大きく気を吐いて足を組んだ。


なんでそんなにうっとおしそうに言うの?


一体、何を言っているの…?


「あの日もそうしとけばよかったな、イレギュラー過ぎて考えてる暇なかったから記憶操作すんの忘れてたんだよな」


あぁ、どうしよう。

なんだかすっごく腹立たしい。


目の前にいる彗くんが、彗くんの顔した誰かが喋ってるのが。

彗くんなのに全然彗くんじゃない。


なんなの、ほんとに…っ 


キィッと睨みつけようとした瞬間、グイッと腕を引っ張られた。

「あっ」

「絶対彗に言うんじゃねぇぞ」

「…!」

私の右手をギューッと掴み、反対の手で頭を後ろからガッと掴んで固定した。

体が動かない、少しでも離れようと必死に後ろへ体重をかけてるのに。

「俺は全部見てるからな」

強い力とドスドスと刺さるような低い声、鋭い眼光から感じる支配力。

「言ったら…、どうなるか覚えとけよ」

それはまるで監視されてるみたいだった。