パブリックダーリン~私と彼と彼氏~

「紫衣」

「は、はいっ」

やばい、やられる…!

怖くなってきゅうっと目をつぶった。

「ガム持ってない?」

「……え?ガム?」

思ってもなかった質問に目を開けた。

「ミントの」

「あ…持ってない、食べないから」

「だよなァ」

はぁっと肩を落とすように息を吐いてまたベッドに戻って来た。

ドカッと座ってさっきよりベッドが揺れた。

…探してたのガムだったの?
そーいえば彗くんと違ってこの人はカラいガム好きっぽかったよね、ガム食べたくて立ち上がったの??

「……。」

「…。」

「……。」

またベッドに並んで座ることになった。

ん?これはまた無言の時間が続く系…?
えっと、そんなにガムないとダメだった…!?

ふぅっと隣から息を吐く音が聞こえた。


「俺には全ての記憶がある」


体重をかけるように後ろに手をついて、少し上を見ながら話し始めた。

「俺は彗の後から生まれた副人格だ、彗が何をしてたのかどこに行っていたのか誰と話したのか全て把握している。知らないことは一切ない」

副人格…?
また初めて聞く言葉だ、彗くんが主人格だから副ってことかなぁ。


「だから紫衣のことだって俺は知ってるけど」


視線を合わせた。

なぜか見透かされてるように気分になった。