パブリックダーリン～私と彼と彼氏～

ガサガサと頭を掻いて、はぁっと気だるそうに息を吐く。私のうるさい心臓とは裏腹に静かに口を開いた。

「…誰か、なんて答えはねぇよ」

吐き捨てるようにまるで自分には関係ないかのように言った。

「柏木彗の中に存在してるだけで誰かなんてない、今紫衣の前にいる俺が柏木彗の中にいるもう1人の人格ってだけだ」


彗くんの中に存在してる…？


何度聞いてもよくわからないんだけど、彗くんの体の中にもう1人彗くんじゃない人がいるって…

それって…


「二重人格ってこと…？」


他に言葉を知らなかった、これくらしか。
でもそれがどんなものかはハッキリはわからなくて、二重人格ってどんな人なんだろうって。

「簡単に言えばそうだな」

たぶん、名前の通り2つの人格が1つの体に宿ってる…ってことなんだよね？

だから彗くんの体の中に彗くんともう1人…

「あなたは、誰か…わからないものなの？」

前を向いていた彼がスッとこっちを見た。

「あ、あのっ！そーゆうんじゃなくて、あの…なんとなく1人1人名前とかあるものなのかなってイメージあったから…それで聞いただけっていうか」

「俺にはない」

また前を向いて、低い声で話し出した。

「二重人格って言われる奴に付けられる名前はそれぞれだ、最初から名乗ってる奴もいればあだ名の奴もいるし誰かに付けられる場合もある」

「そう、なんだ…」

もう1人の人格って言うから、別の人が一緒に住んでる感覚かと思った。だからそれぞれ名前があるのかなって思ったんだけど、みんながみんなそーゆうわけじゃないのか。