パブリックダーリン~私と彼と彼氏~

「そうゆうことだから、じゃあ」

そうゆうことだから、じゃあ?

スッと指先を揃えた手を前に出し、これで終わりねと合図のようにピタッと手を止める。
じぃっと私の目を見て、私に何も言わせようとしなくて。

…って、それだけで納得できるわけないじゃん!

何それッ、なにがそーゆうことなのか全然わかんないんだけど!!

「ちょっと待ってよ、何!?何がっ」

「だからデカい声出すんじゃねぇって言ってるだろーが」

「…!」

グッと近付いてきてまた押し倒されちゃうんじゃないかって体が固まった。

咄嗟に口をぎゅっとつぐんだけど、そんな静かなテンションでできる話ではないと思う…


んだけど!


「…他に教えてくれることはないの?」

でもまたあんなことになるのは困るから、言われたように小さな声で聞くようにした。

「それだけ言われて、“はい、わかりました”なんて言えるわけないよ…っ」

これがどんな状況かもよくわからないし、全く理解もできてはないけど、落ち着けるように深呼吸をしてグッと顔を上げた。

「だって今ここにいるのは“彗くん”じゃないってことなんでしょ…?」

ひるまない、ちゃんと彗くんの声が聞きたいもん。

「“あなた”が誰かを教えてよ…!」

心臓はバクバクしてた。

彗くんだけど彗くんじゃない人と2人きり、もしかしてのことだって考えなかったわけじゃない…けどここまで来ちゃったんだからこのまま帰れないよ。

ちゃんと教えてくれないと、帰れない。