パブリックダーリン~私と彼と彼氏~

「い…っ、いやぁ!」

もう一度目を合わせた彗くんは鋭い目つきをしていた。

「いや…っ、やめて!!」

しかもさっきよりも距離が近くなった。

上から私を見てる彗くんはベッドに両手を付いてじーっと瞳をとらえて、ゆっくりと顔を寄せ始めた。

「やっ」

やばい、怖い!

どうしよ!?

どうなっちゃうんだろ私…!?

きゅっと目をつぶった。

迫って来る彗くんお顔をぐーっと押して引き離すように。

「い…っ、んぐッ」

いっぱい息を吸って思いっきり声を出そうとした時、彗くんの手にむぎゅっと口をふさがれた。

「うるせなぁ、静かにしろ!」

え、絶対彗くんの方がうるさかったよね!?

「何もしねぇーよ!!」

してる、もうしてる!

すごい強い力で口塞がれてる!

「ん…っ」

まるで押し倒されてるみたいな体制になった。おかげで体は動かせないし、てゆーか震えちゃって全然動けそうになくて。

せめて彗くんの口をふさぐ手をどかしたくて両手で必死に掴んだけど全然かなわない力だった。

「そのまま絶対声を出すなよ」

「…っ」

「何があっても叫ぶんじゃねーぞ!」

「!?」

このままどうなっちゃうの!?

何されちゃうの!?


やだ、彗くん…!


いつもみたいに笑ってよ 

紫衣ちゃんって名前を呼んでよ 

そんな顔で私を見ないでよ 


触れるならもっと優しく…っ 


やっぱり彗くんじゃない、こんなの彗くんじゃないよ…!


なんでこんなに近くにいるのに彗くんじゃないの?

彗くんはどこに行っちゃったの?



ねぇ、今目の前にいるのは誰なの?



スーっと顔を近付けた彗くんがささやくように言った。



「俺は…柏木彗のもう1人の人格だ」