「ねぇ彗くん!」

名前を呼んで振り返ると、階段を上らないで止まったままの彗くんが俯いてた。

「彗くん?どうしたの…?」

下を向いて、静かに声を出した。

「ねぇ紫衣ちゃん」

ゆっくり顔を上げる、私を見るように。

「紫衣ちゃんはオレと一緒にいていいの?」

「…なんで?なんでそんなこと」

瞳から感じる不安げな眼差しは揺れていて。

「だって紫衣ちゃんが好きなのはっ」

「彗くんだよ!」

彗くんが次の言葉を言う前に答えた。

食い気味に被せるように、遮って。

「私が好きなのは彗くん!ずっとずっと彗くんが好きだよ!」

「紫衣ちゃん…」

「彗くんが大好きだよ!」


ばいばい、ケイ。

またねって言えないのが寂しいけど、会わないことがしあわせなんだもんね。


しあわせだから、きっと。


私のこと、忘れないでね。

私も忘れないよ、ずっとずっとケイはここにいる。


“あとは、頼むよ”

彗くんのそばにいるから…


「だからこれからも私と一緒にいてね!」





彗くんの中で、生き続けてね。