「じゃ、パン買って来る!」

「うん、飲み物買ったらいつもんとこで待ってるね」

人だかりに入っていく美月を見送った。

少しだけモヤモヤする気持ちをごくんっと飲み込んで、何もなかったように廊下を真っ直ぐ進んだ自販機まで歩く。

フルーツ・オレだ!絶対フルーツ・オレにするんだ!って頭の中をフルーツでいっぱいにしてたどり着いた自販機の前、ポケットから小銭を取り出して投入口に入れた。

すぐにボタンを押して落ちて来たフルーツ・オレを取り出して立ち上がる、ふと気になった人影の方を見ながら…

「あ…」

「あぁ、小村さん…」

柏木先輩だった。

にこりと微笑むわけでも睨みつけるわけでもない柏木先輩はただ私の顔を見ていた。

「久しぶり、だね」

「そうですね…」

彗くんから柏木先輩の話は聞いていたけど、私が柏木先輩と会うのは…

“こんなことをしても柏木先輩が苦しくなるだけです、私を彗くんから奪うなんてことできませんから”


気まずい、めっちゃくちゃ気まずい…


あれから初めて会うの気まずすぎる…!


「小村さんに言いたいことがあって」

「は、はいっ!なんですか!?」

きゅっとフルーツ・オレを両手で握った。


目が泳いじゃう、何言われるのかなって…っ


「申し訳なかった」

「え…」


スッと姿勢よく頭を下げた。

そんなこと言われると思ってなくて、それはそれでどうしたらいいかわかんなくなっちゃって。

「え、あ、あのっ」

しかも学校(ここ)で!?
私にそんなことして大丈夫なの!?

みんな見て…っ 

ざわざわとみんなが見てた。


でも柏木先輩は何も気にしてなかった。


「……。」

裏の柏木先輩は誰も知らない。

知ってるのは今はもう私だけ。


でもそんなのもう関係ないんだ。


全部関係ないんだね。


「柏木先輩、顔上げてください」

笑って見せた。

許せないって思ってたけど、彗くんが嬉しそうに話してくれた柏木先輩のこと…

あんなに彗くんが嬉しそうなんだ私が許すとか許さないとかそーゆう問題じゃないね。


怖い思いはしたけど!

あれはすっごく怖かったけど!!


でも、こうして頭を下げてくれたから…まぁいいか。

「謝ってくれてありがとうございます」

許してあげようかな。