「それで…」

かと思えばケイが顔を曇らせた。

「全部彗に話そうと思う」

「え…」

彗くんに…って、どーゆう意味?
そんなことできるの?

全部を話すって…

「彗を取り戻すにはこの方法しかなかったんだ、最初から」

柵に寄りかかっていた体を起こした。ポケットに入れていた右手を取り出して噛み締めるように広げてぎゅっと握った。

「彗が消えた時点で出来ることはこれしかなかった。全部を話すのは酷だと思って出来なかった、だけどそれは俺のエゴだ。これは彗の身体なのに俺が自分勝手にっ」

「違うよ!」

思わずケイの手を両手で握っちゃった。

ケイの大きな手を包み込むようにぎゅっとしたの。

「エゴじゃない、ケイの優しさだよ!ケイはいっつも彗くんのこと考えてた、自分のことより彗くんのことばっかでそうやって守って来たんだよね!?彗くんのことずっと…だからっ」

顔を上げてケイの方を見る。

「ありがとうっ」

目を合わせると、なんだか不思議で私の方が恥ずかしくなっちゃった。

やっぱりそんな表情見慣れないから、彗くんみたいな表情するケイなんて。

胸の奥がドキドキ鳴り始めて、頬が赤くなる。

「彗に全部記憶を返す、傷付くかもしれねぇけど」

「う、うん…!」

全部返すって、どこからどこまでなんだろう…

あ、全部だから全部か!


じゃあ最初から、ケイが生まれた日から…


「あ、あの私は!?私は何したらいい!?なんかっ」

私が握っていた手をケイが握り返した、ううんっと横に顔を振って。

「あとは、頼むよ」

目を合わせて、静かに頷いた。

ゆっくりと手を離して、目を潤ませる私にくすっと笑った。


「じゃあな、紫衣」