「星はとことん彗から奪いたいんだよ、それで自分は何でも持ってるって優越感に浸りたいんだ」

「…。」

「それで満足するなら簡単なことだろ?」

それがケイの彗くんを守る方法なんだよね、それはわかってるの…

全部ケイが受け止めて我慢して、そうやってずっと彗くんのこと守って来たんだよね。

そうやって柏木先輩から彗くんのことをケイは1人で守って来たんだよね。

「だから星は彗から紫衣を…っ」


でも全部ケイが背負わなくたっていいんだよ…!


「!」


後ろからケイの腕と体の隙間から手を入れてキュッと制服を掴むように抱き着いた。

「嫌だっ、私は離れたくない」

ずっと1人で耐えて来た彗くんの気持ちがわかるのはケイでしょ、だったらどうしてケイまで1人で耐えようとするの?

「俺から離れるなって言ったのはケイだよ!?じゃあ離れないでよ、守ってよ私のこと!」

もう我慢しないで自分を諦めないで、ケイも笑っていいんだよ。


彗くんだけじゃない、ケイだっていいんだよ。


「私はケイと一緒にいたいもん…!」


私のために離れようとしてるなら私がケイを1人にしない。


私がケイといる。


「頼ってよ、私もう守ってもらうばっかじゃ嫌なの!」


私だってケイのこと守りたいよ、ケイが私のことを守ってくれるみたいに。

私じゃ全然頼りにならないかもしれないけど、守らせてよ。


「…紫衣は彗の彼女で俺とは関係ないんだぞ」

「あるよ」

「ねぇよ」

「ある!」

ぎゅぅっと力を入れる、ない力を精一杯振り絞るように抱きしめた。

「絶対あるもん!」

もうとっっくに授業が始まってる、隣のクラスから英語で話す声が聞こえてて。

でも私たちのクラスには私とケイしかいなくて、静かな空間にたまに冷たい風がひゅーっと入って来る。

「…1人にさせてくれよっ」

ケイの小さな声が聞こえた。

たぶんぎゅってしてなかったら聞こえなかったよね。

それくらい小さな声で、泣きそうな声だった。

「紫衣…っ」

振り返ったケイが私を抱き寄せた。

優しくグッと包み込むみたいに、つたなくてやわくて。