「もういいから!降ろして!もう大丈夫だからっ!!」

「んだよ、暴れんなよ!」

「恥ずかしいから降ろして!」

手足をバタバタさせてケイに降ろしてもらうようお願いした。

この状態のまま柏木先輩の部屋から逃げて彗くんの家からも出て来た。

玄関で降ろされるのかなって思ってたらケイが私のスニーカーを持って彗くん家から飛び出したから、お姫様抱っこをされたまま…街中ですれ違う人に見られるのは恥ずかし過ぎる!!

「紫衣足遅せぇから」

「悪かったね遅くて!!」

立ち止まったコンビニの横で降ろしてもらった。隣は壁、隠れるようにして中途半端に着ていた自分のコートを着直して彗くんのコートを返した。

「…ありがとう」

「ん」

いざ降ろされて顔を合わせたらなんだかその方が恥ずかしくてつい顔を逸らしちゃった。あと泣いた後だからこんな顔を見られるのもちょっと嫌だったし。

「紫衣、ごめん」

ケイが俯くように少しだけ頭を下げた。

「怖い思いさせた、ごめん」

さっきまでの殺気は消えて細い声をしていた。

「守るって言ったのに…っ」

柏木先輩のことはすごくすごく怖かったんだけど、涙が勝手に流れてくるぐらい怖かったんだけど…

ケイも同じくらい怖かったのかなって消え入りそうな声を聞いて思ったんだ。

私もケイに怖い思いさせちゃったんだ。