「なんだ、帰って来たのかぁ…っ、うッ」

ドアの方を振り向いた柏木先輩を部屋に入って来た勢いそのままでドカッと蹴り飛ばした。床に体をぶつけた柏木先輩は衝撃が強かったみたいで胸を押さえながら転がった。

「紫衣っ、大丈夫か!?」

駆け寄って来てくれて支えるように体を起こしてくれたけど、乱れた服が恥ずかしかった。

安心はしたけどこれはっ 

ぐちゃぐちゃだよ、直さなきゃ…っ 

でもテンパっちゃって手がうまく動かなくて… 


パサ…ッ


と胸元を隠すように羽織っていたコートをかけてくれた。

彗くんの匂いがする、彗くんのコートだ。彗くんの…

「え?」

かけてもらったコートの中に身を丸めているとふわっと体が浮いた。

ケイが私のことを抱き上げたから…


って何これ!?

え、これって…


お姫様抱っこーーーーーーーー!?


あぁぁぁぁっ 

これはこれでこれも恥ずかしいよ!!!


顔が赤くなる、こんなことされたことなくて。

「紫衣は俺のだ」

床に横たわった柏木先輩を上から睨んで、重たい声を響かせた。

「好きにはさせない」

声のトーンは落ち着いてっていうか落ち着きすぎてるっていうか、あれだけ大きな物音を立てて入って来たのに逆に静かに話す声がケイが怒っているのを感じる。

ビリビリと伝わる殺気を纏って、私はその腕の中でおとなしく抱かれていた。

「今度紫衣に何かしたら覚えとけよ。好きにはさせない、紫衣のことは…!」