「お邪魔します…」

2回目の彗くんの家、広いけどすごく静かだ。

お母さんは今日もいないのかな?上がっちゃって大丈夫だったかな…

「あの、彗くんは…?」

「部屋だよ、2階だからこっちね」

今日の柏木先輩は穏やかでにこにこと笑ってた。

それが無性に怖かったけど、彗くんがいるんだって思ったら…ここは何も言わずに乗り切ろうと思った。

柏木先輩の後ろをついて階段を上がる、彗くんの部屋は階段を上がってまっすぐ行って角を曲がったところ…1番奥にある。
だからこの距離が遠くって、早く行きたいのに前を歩く柏木先輩は一歩一歩ゆっくり進んでいくから。

「?」

ピタッと柏木先輩の足が止まった、ドアの前で。

「ここだよ」

でもまだ曲がり角も曲がってない。

「え、彗くんの部屋は…」

次の瞬間、柏木先輩がにやりとほくそ笑んだ。

「わっ」

強い力で腕を引っ張られ開いたドアの先へ暴力的に投げ込まれた。

腕が抜けるんじゃないかってぐらい力が強くて、引っ張られたかと思ったら突然離されたから勢い余って倒れ込んだ。

「痛っ」

振り返った時にはもう遅かった。

柏木先輩が脅しを秘めた態度で見下ろすように立っていた。フッ、とせせら笑って。

「所詮、お前も馬鹿だな」

サァーッと血の気が引いていく。

大きく目が開いて体が固まった、一瞬息が止まっちゃうかと思った。

「今更遅せぇよ」

その顔に、全部嘘だって気付かされる。

変だって思ったのに、そんなはずないって思ったのに…


どうしてここへ来ちゃったんだろう。