泣きすぎるとこんなにまぶたって重くなるんだ。

朝起きてびっくりした、スマホのインカメラでこんなに分厚くなったまぶたを見て学校へ行くのやめちゃたいなって思った。

昨日、冷やして寝ればよかったかな。

でもそんなこと考える余裕もなかったんだもん。

昨日は…


“紫衣が知らねぇだけだろ”

目を閉じれば浮かんでくるのは私を鋭い視線で見る彗くんで。


思い返すのは目を閉じるのさえ忘れたあの瞬間…


「ううん!もういい、忘れる!彗くんなんて知らないんだから!!」

がばっと勢いよく体を起こした。

いつまでも寝てる場合じゃない、学校行かなきゃ。

あんなの忘れてやる。

あんなの事故だよ、ただ唇と唇が当たっちゃっただけなの!

それ以上でもそれ以下でもないの!


もう彗くんのことなんてちっとも好きじゃないよ!!


ベッドから出て制服に着替えた。

もう全部忘れて最初からなかったことにするんだ。 


…そう思っていたのに。


「紫衣ちゃんなんで昨日先帰っちゃったの?」

「………え?」

なかったことにされたのはこっちの方だったんだけど。

「てゆーか目どうしたの?腫れてない?」

何その聞き方…
全部彗くんのせいなんだけど!!?

「なんでって…だって彗くんがあんなことするからっ!目だって腫れるよ、わかるでしょ!」

学校に着くや否や、もう絶対彗くんとは話さない!って決めてたのに教室に入る前から話しかけられた。

同じクラスだから、顔を合わせるのも嫌だって本当は悩みながらここまで来たのに。

「あんなことって?何かしたっけ?オレ」

しかも今日はきゅるんとした瞳で声だっていつもみたいに高めの声で話してる。

本当にどこまで別人気取るんだろう。

「したじゃん!なんで覚えてないの!?」

「え、何した?」

その態度、全くわからないんだけど!! 

昨日の今日でどうしてそんなことが言えるの?あんなひどいことしといてどうしてそんなにいつも通り…っ