彗くんの中に彗くんがいなくなって1ヶ月以上が過ぎた。



彗くん、もう会えないの?

会いたいよ、彗くん…



「92点…!」

彗くんが赤点を取った数学の追試の答案用紙が返って来た。

「え、ちょっと取り過ぎじゃない!?テスト8点だったのに92点は上がり過ぎじゃない!?」

「カンニング疑われた」

「てゆーか字も違うよね!?」

「替え玉も疑われた」

彗くんがいない間はケイがいた。

だからテストの追試もケイが受けたんだけど…やっぱ頭いいんだなぁ、私が教えなくても全然どうにでもなっちゃうじゃん。

「でも受けてたところは見てるからな、柏木彗しかありえないって一応は治まった」

「…どこからどう見ても彗くんだもんね」

それはもちろんあたりまえで、中身が別の人格だなって普通は思わないもん。

これを知ってるのは私だけ、私だけが知ってること。

「じゃあ…無事?追試終わってよかったね」

授業後行われた追試が終わるのを待っていたからみんな帰った教室で私たちだけしかいなかった。しーんとする教室、グラウンドではサッカー部とハンドボール部が部活に励んでる。

頬杖をつきながら窓の外をぼーっと見てるケイは何を思っているんだろう。

「ねぇ…彗くんはどうしてるの?」

「…さぁ、気配はなんとなく感じるけど呼んでも返事はないからな」

「そうなんだ…」

寒さが強くなって来た12月、風の冷たさにケイが窓を閉めて外を見るのをやめた。

「俺の存在に気付いたんだろ」

彗くんはどう思ったかな、自分の中に自分じゃない人がもう1人いるって…怖かったかな。

でもね、彗くんが姿を消したのはそれが理由じゃないと思うんだ。

「私のせいだよ」

私が彗くんを消しちゃったんだよ。