「紫衣ちゃん!待って、待ってよ!!」

「…っ」

「紫衣ちゃん!ねぇってばっ!?」

「っ」

「紫衣ちゃん…っ!」

走る私の腕を掴んでぐいっと引っ張った。

私が一生懸命走ってもすぐに追いつかれちゃうことなんてわかってた。

「紫衣ちゃん…」

大丈夫だって思ってた。

私を信じてくれる人がいるから平気だって思ってた。

なのに溢れる涙が止まらない。

ポロポロと流れて来て止まらないの。

「あのオレ…っ」

もう止まんないの…っ

「どうしてこんな時は守ってくれないの!?」

こんなこと言っちゃダメなのに。

そう言われたのに。

「ごめっ」

「見てるんでしょ!?そこにいるんでしょ!」

「紫衣ちゃん…?」

彗くんを見ているようで見ていなくて。

目が合ってるのに通じ合ってなくて。

彗くんが困ってる。

「助けてよっ!助けに来てよ…、会いに来っ」

とんっと胸の中に閉じ込められた。

掴まれたままだった腕が引っ張られ、その瞬間伸びて来た腕に包まれる。

何度もこんなことはあったけど、いつもは後ろから手が伸びて来るばっかりでこんな受け止められるように抱きしめられたのは初めてだった。

抱き寄せられたのは初めてだった。

「…ケイっ」

「俺にもいろいろあんだよ…っ」

はぁっと息を吐く、でもなぜかそんな姿に安心しちゃった。

むかつくヤツだって思ってたのに安心しちゃったの。

「ごめん、紫衣」

ケイの背中に腕を回す、きゅっと制服を掴んだ。

ふるふると震えながらケイの胸の中で止まらない涙を流した。

わかってる、わかってるの。

「…うん」


でも会いたくなっちゃったんだもん…



ケイに。