ホームルームが終わったら彗くんと図書室へ、やっぱ勉強するなら図書室だよね!ってまずは形から入ることにした。

大事だよね、気持ち作るの。

図書室なら静かだし、机もいっぱいあるし、落ち着いて勉強できるかなって中に入った。とりあえず空いていた窓際の席に向き合うように座って、数学の教科書と問題集、ノートを取り出した。

まだテスト終わったばっかだもんね、覚えてるとこ結構あると思うんだ。あといつもよりちょっとよかったもん。

「じゃあ彗くんここの問題からっ」

はいっと教科書を見せた時、静かだからこそ声がよく通って聞こえて来た。


「あの子じゃない?」


ピクッと体が反応する。


…あの子って?誰のこと?


ひそひそ声が聞こえて来る。

みんな小さな声で話してるから全部が全部聞こえるわけじゃないけど、自意識過剰かな?ここずっと噂を聞きすぎて全部が自分のことかと思えて来ちゃう…

「紫衣ちゃん?大丈夫…?」

「あ、うんごめんね!大丈夫、やろっか勉強…」

聞こえないフリをしてシャーペンを持った。



「柏木先輩可哀そう」



……。

グサッと刺さったみたいに胸が痛かった。


違うのになぁ…、どうしてそんな風に思われちゃうんだろう。


ひどい、さいあく、きもい、しね…


聞きたくない言葉が私の周りを囲んで離さない。耳をふさぎたくなる。


ねぇ、どうしたらいいの?

どうすればいいの?


彗くんの方を見た。

「紫衣ちゃん…」

助けを呼ぶみたいに、滲んで見えない瞳で…


でも何も言ってくれないんだね。


ゆっくり目を閉じれば、ぽとっと一滴水滴が落ちた。

「待って紫衣ちゃん…っ!!!」


逃げるように走った。

全部を置いて、振り返らないで泣きながら走った。