たまーに涼しい風が吹くようになった10月、返って来た数学のテストがいつもよりちょっとだけよかった。ほんのちょっとだけど、いつもより5点くらい上なだけだけど。

「あぁぁぁ…うわあぁぁぁぁぁ~……あー…っ」

まだ授業中なのに無意識に絶望的な声が漏れちゃってる彗くんはたぶんよくなかったね、きっとよくなかったね。

でもまだ先生話してるから、答え合わせするのに話してるから、ちゃんと聞いた方がいいよ!!


「紫衣ちゃんテストどうだった~?」

授業が終わると半泣きでしょぼんとする彗くんがテストの答案用紙を持って、席に座る私のもとへやって来た。

「私は…」

いつもよりちょっとだけよかった!って言いたかったんだけど、それより先に彗くんの点数が見えちゃってギョッとして言えなかった。

「彗くんやばくない!?」

「紫衣ちゃん~~~っ、やばいよね!やばいよね~~~!?」

今回の平均点は62点、だから赤点は31点以下…をかーなーりッ下回ってた。

「追試も受かる気がしないよ~~~!」

えぇっと、追試不合格だとどうなるんだっけ?留年?再追試?関係ないと思ってあんまり聞いてなかったなぁ…でも彗くんはとにかくやばい感じ!

「どーしよ~~~、数学超嫌いなのに~!全然わかんないよ~~~!」

片手で足りるくらいの数字のテストを片手にうるうると瞳を潤ませてる。

そうなっちゃう気持ちはわかるよ、わかる… 

てゆーかこんな時ケイは出て来ないんだ。宿題はやってあげてたのにテストは違うんだね、ケイだったら出来たかもしれないのに。

「わかった!」

ガタンッとイスを後ろに立ち上がる。

「一緒に勉強しよ!…って私も人に教えられるほど得意じゃないんだけど、いつもよりできたから!ちょっとなら教えられるかもしんない!」

「紫衣ちゃん…!」