「紫衣ちゃん予習して来た?」

「して来たよ~!」

「ねぇ問の2って答えなんだった!?オレ今日当たるの!」

「えっと問2はねぇ…」

今日はぽかぽかあったかくて、廊下の窓を開けて外を見ながら彗くんと次の授業のノートの見せ合いっこをしてた。当たるっていう彗くんは念入りに予習して来てた。

「紫衣ちゃんの字ってかわいいよね!」

ノートを見ながら彗くんが大きな声で言った。

「え、かわいい?ってあんまり思ったことないけど、すごいクセ字だなーって自分では思ってた」

「かわいいよ、まるっこくて!」

まるっこい…すっごい丸文字だよね、私の字って。それをかわいいって…

「オレ超字下手だからさぁ~!」

彗くんの開いたノートを見れば…まぁ、うん…お世辞にも上手だね!とは言えない文字が並んでて。

「あ、笑っていいよ!」

「え?」

「ここ笑っていいとこだから!」

私より先に彗くんが笑ってた。

彗くんの周りはいつも穏やかな空気が流れてる、これが彗くんだもんね。

「あ、で問2の答えって何!?」

「そうだ、えっとねぇ~…y=」

「2x-3」

「そう、私もそれになった!」

「……。」

次のページを開いた彗くんは不思議そうな顔でじっとノートを見てた。

「答え書いてあるんだけどオレやった記憶ない…」

記憶がない?

それって…

「あ、にーちゃんが教えてくれたんだ!」

すぐにパァッと表情を明るくした彗くんだけど、そんなの絶対ありえないと思った。

気になって彗くん両手で持っていたノートを覗き込んだ。

…、誰の字?
彗くんの字じゃない全然…

でもこんなことするのできるのって1人しかいない。

「たまにね、にーちゃんが教えてくれるの!にーちゃんすげぇ頭いいから!」

嬉しそうに教えてくれる、でも柏木先輩が教えてくれるなんてそんなことあるわけがない…でも彗くんの中ではありえちゃうんだよね。


彗くんの中ではそんな記憶なの?

それを書いたのはケイだよ、彗くん。


でも彗くんは知らないもんね、ケイのこと。