「紫衣…!」

ダダダダッと階段を駆け上がって来る音が聞こえて、私の顔を見るなり美月がハッとした表情を見せた。

「あ、ごめん!邪魔した!ごめん、戻る!!」

「あ~~~っ、待って美月!大丈夫、いいからいいから!」

なんだかすごい勘違いをされそうでケイから手を話して美月を呼び戻した。

別に邪魔はされてない!
邪魔されて困ることはしてない、ここ学校だし!!

「美月…っ」

グッと腕を掴んで呼び止める。
でも美月は下を向いて私の顔を見てはくれなかった。

「美月?」

「紫衣…、さっきはごめん」

「え…?」

「何も言えなくて…」

あ、わざわざ謝りに来てくれたんだ…

「ごめん、何か言った方がいいのはわかってたんだけどあれだけ人がいたからちょっとビビちゃって…ごめん!紫衣のこと助けてあげられなくて!」

やばい、泣きそうになっちゃう。
美月が迷ってたのは私を助けてくれようとして…悩んでたんだ。

「ううん、いいよありがとう…大丈夫だから」

「ごめん…!」

ぐーっと頭を下げて、そこまで下げなくても…って思ったけどそれだけ美月の気持ちが伝わって。

「いいよ、大丈夫だから。気にしてないし」

嬉しかった。

「あ、でもね!さっきのはほんと違うからね!私柏木先輩とは何もないし、そこはほんとに!」

「それはわかってるよ!」

美月が顔を上げた、私と目を合わせるようにして。

「だって紫衣、柏木のこと超好きじゃん」

「……。」

めっちゃくちゃ顔赤くしちゃった。

そんなにハッキリと言葉にされて恥ずかしくなっちゃった。

そーなの、大好きなの♡ってきっといつもなら言ってた…


けど、後ろにケイがいるから!

いるんだもん!!


私たちの会話なんて興味ないだろうけど、もしかして聞いてないかもしれないけど、かぁ~っと顔が赤くなっちゃった。

「だからそれは信じてない、私は紫衣のことを信じてるよ」

私が何を言ってもしょーがないと思ってた。

何を言っても誰にも伝わらないって、だけど言わなくてもわかるんだね。

わかってくれる人が2人もいる、だから大丈夫だ。私は大丈夫だよ。