ただ私の中で心配なことが1つあって。

夏休み中はどうにでもなるだろうと思ってたからよかったんだけど、学校が始まっちゃうとちょっと気を付けた方がいいかなって…


柏木先輩のこと。


あんなケンカ売るようなことしちゃったし、次会ったら何言われるんだろうって正直心臓バクバクしちゃって。

それを思うと学校に行くのがちょっと怖い。

どうか会いませんようにって願うばかりだよ…!


「あ、紫衣ちゃん!コンビニ行ってい?」

「うん、いいよっ」

「新発売のチョコレート欲しいんだ~!一緒に食べよ!」

「どんなチョコレート?何てやつ??」

彗くんが調べたスマホ画面を見せてもらいながらコンビニに入った。

お菓子コーナーに直行して画像と同じチョコレートを探す、えっと赤色のパケで丸いクッキーの反対側にチョコレートがついた…まだ見付かってないけどたぶんおいしいやつ!

「…あっ!」

下まで見ようとしゃがんだら目の前に飛び込んで来た。

「見て彗くん!これカラオケのパフェに乗ってたウエハースじゃない!?真四角のこのサイズたぶんそうだよね!?」

思わず手が伸びて箱を持っちゃった。

私の記憶の中であのウエハースがしっかり刻まれてたの、でも言っちゃいけないやつだった。

「…紫衣ちゃんと一緒にカラオケ行ったことないよね?」

同じようにしゃがんで目を合わせた彗くんが不思議そうな顔で首を傾げた。

「え…」

その顔にすぐ思い出した。

「あ、そうだよね!?行ったことない!行ったことないよ!美月だ!美月と行ったんだった!」

あわててウエハースの箱を棚に戻した。ぎゅっと押し込んだから奥の方まで入り込んじゃってパタンッと後ろに倒れた。

「そんなにおいしかったの?そのウエハース」

「ん~っ、どうだったかな!?覚えてないかも!」

無駄に早口になっちゃって、でも何か言わなきゃいけない気がして。

「ねぇ彗くんの言ってたお菓子どれかな!?ないっぽい!?別のコンビニ行こっか!!」

彗くんから顔を逸らして立ち上がった。

無理やり早く次のとこへ行こうって、腕を引いて…


間違えちゃった。


あれはケイだった。


彗くんじゃなかった。


彗くんは知らないんだ。



彗くんは知らなかった…!



ケイ…、記憶操作しなかったの!?