「ケイっていつもはどうしてるのかなって、気になっちゃって…その、どんな人なのかなって…」

さっきまでの勢いは急に失速して、意味もなく前髪を触ちゃった。


…ん?


あ…っ!

待って今の発言の方がなんか!!

「そ、そうじゃない!そーゆう意味じゃないよ!?彗くんの、えっと中に?いるから彗くんの知り合いみたいな!?じゃないか…、なんて言うんだろう?えっとっ」

視線を下ろすしかなくて、わたわたと慌てる私にスッと手が伸びて来た。

「!?」

顎の下から顔を掴んでグイっと向きを変えられる。

嫌でも上を見ることになってケイと目が合った。

顔と顔が合うように、距離が近くて… 


じっと私を見てる。


瞬きすることなくじっと。


え、何?

何なの…?


ドキドキと胸が鳴り始める。


私たちしかいないカラオケの個室、煽られるように鼓動が早くなる。

「…っ」

かすかに香るミントの匂いがふわっと鼻の中に入って来るみたいで。

「彗の漫画はつまんねぇ」

「……え?」

「似たようなギャグ漫画ばっかで飽きるんだよ」

手を離された。
それ以上は近付くことなく、ケイは離れて行った。

「そーなんだ…、彗くんギャグ漫画好きだからなぁ」

さっきよりも恥ずかしい。



何期待してたの?私…