「なに、あんた?」




 作業台に頬杖をついて、体をよこに向けながらどうどうと足を組んだ108番の姿は、まるで王者のよう。

 ふれたら一瞬で切り刻まれてしまいそうな、キケンな雰囲気をまとっている。

 それに触発されたように、他のVerbrechen(フェアブレッヒェン)生も殺気立っておえらいさんを見ていて…。




「ふむ…口の()き方を知らないな。拾えと言っているんだ」


「はっ、“落としたやつが拾う”。常識知らねぇの?」


「刑務所でのルールはただひとつだ。受刑者は、“言われたことに従う”」


「ふぅん?独裁者気取りか。…俺のまえで?」




 へらりとした笑顔。

 それが表しているものはただひとつ、“(あざけ)り”。

 その表情のまえでは、自分が彼より上の存在であるなんておごりが恥ずかしく思えた。




「108番。貴様は受刑者だ。身のほどをわきまえろ」


「…」