「先生もおわかりでしょう。そのような(あや)うい手段を使わずとも、赤城(あかぎ)会ならVerbrechen(フェアブレッヒェン)をかくし通せる」


「…そうですね。私も財前とおなじように考えています」




 ため息まじりの声が頭のなかを上すべりしていく。

 手のなかのアイスティーをぼうっと見つめながら、私の頭に浮かぶのは雷牙のことばかり。




「ですが、そう思っているならなぜこんな提案をしたのです?財前はむだをきらう性格だったと記憶していますが」


「えぇ。藤枝のためです。寮生活で疲れが溜まっているようなので」


「…変わりましたね」


「俺もそう思います。…藤枝」




 いまごろ、どこでなにをしてるんだろう…。

 脱獄なんてして、これからどうするつもりなのかな…。

 どうしてVerbrechen(フェアブレッヒェン)を連れていったの…?




「藤枝」




 ぽん、と肩に手を置かれて、ハッとする。