大事件を目の当たりにした動揺というのは、とっぴな想像に拍車をかけるものなのか。

 またたく間に飛躍したうわさばなしにドキリとする。

 私がうたがわれてる…?




「…静かに。藤枝、弁明は?」


「え、あ…」


「…どうした」




 じっと見つめられて、ハッと我に返った。

 そうだ、私、ちゃんと否定しないと。




「…誓って、私は脱獄に…犯罪行為に手を貸したりしません!108番はたしかに私を気に入っていたようですが…なにも、聞いていませんでした」




 視線が落ちて、ぎゅっと目をつむる。

 それからふたたび財前先輩を見ると、目を合わせてこくんとうなずかれた。




「藤枝に怪しい点はない。各自、容疑者を探すように。脱獄に手を貸すことはれっきとした犯罪だ。我々のなかにいる犯罪者を決して見逃すな。以上」




 財前先輩の宣告で、会議は終わりを告げる。

 私は床を見て、そっと目を伏せた。


 雷牙…。