僕は目に入った倉庫のなかへと移動して、ポケットの中身を取り出す。

 …2本のたばことライター。

 未成年の受刑者のくせに、Verbrechen(フェアブレッヒェン)はどこからかこういうものを仕入れてくるのが本当に頭痛の種だ。


 Gebot(ゲボート)の2、3年生が退学させられる理由のひとつに、Verbrechen(フェアブレッヒェン)から没収した禁制品を私的利用したことがあげられるけど…。

 僕は手のなかの物品を見つめて、ストレス解消に手を出してみることにした。




「…ふぅ…」


「ふぅん、せこいうわさを流した次は法律違反か。わるいやつはきらいじゃねぇぜ?」


「っ!」




 いきおいよくふり返った僕を見て、そいつはへらりと笑ってみせる。




「おまえはもう俺に逆らえない。わかるな?…ちょいと、手を貸してもらおうか」


「…僕に、なにをさせる気だ…?」


「なぁに、バレやしねぇよ。おまえがこれまでどおり、外づらよくふるまってればな」




 僕はけむりが立ち(のぼ)るたばこを見て、唇を噛んだ。

 …たしかに、逆らえはしない。