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林郷(りんごう)(あつし)視点―


 うわさの効力が、思わしくない。

 財前と藤枝の関係が表面上変わっていないから、最初のうわさはもう消えかけているし。

 “2年女子”と、あえてぼかしたうわさも藤枝特定まで進んでいない。


 おまけに…。




『おなじ2年として、藤枝から意見はないか?』


『だが、藤枝も注意して見て欲しい』




 財前が藤枝を信用する始末。

 タイミングよく盗み聞きできたのはいいものの、これじゃあぜんぜん僕の計画どおりにいかない。

 僕が直接手を下さずにあいつらを突き落とすはずが、微動だにしないなんて…。


 強硬策を使うしかないのか、とイライラしながらポケットに手を突っ込む。

 すると、今朝Verbrechen(フェアブレッヒェン)から没収したものが指先に当たった。




「…」