私のうしろ…つまるところ、まえの席にいる財前(ざいぜん)先輩に背を向けたまま答えた。

 昨日とつぜんプロポーズされたばかりなのに、こんな状況が待ち受けているなんて…。

 どうがんばっても意識しちゃうよ!


 私は必死に机の上のノートを見ながら、いまから教えることに意識を集中しようとして…「景依(けい)」とうしろの雷牙(らいが)に呼びかけられた。




「なんですかっ、じゃましないでください…!」


「きんちょうをほぐしてやろうと思ってな。いいこと教えてやるから、耳貸せよ」




 ちいさくふり返ると、くいくいと人差し指をまげられて、しぶしぶ腰を落とす。

 耳を近づければ、雷牙は口を寄せて甘ったるくささやいた。




「好きだ。俺ならただの生徒じゃなくて、教師として、景依に愛されるしあわせってやつを教えてやるよ。手取り足取り、な」


「なっ…!」