「でも、掴んだ…」




 掴んでやった。

 気に入らない、あの2人のゴシップを。


 刑務官を育てるこの学園で、首席と次席が色恋にふけるなんて、許されるわけがない。

 落としてやる。

 その地位から。


 僕が手にするはずだった場所をうばいとったあいつらを。

 ――突き落としてやる。




「林郷?どうしたんだ?」


「あぁ…ちょっと、おどろいちゃって」




 2階にもどった僕は、同級生に声をかけられて、そう笑ってみせた。




「おどろいたって、なにが?」


「うぅん…言っていいのかどうか。ほんと、とんでもないはなし聞いちゃって…」


「…なんだよ?」




 神妙な顔をあらためて僕に向けてくる同級生の瞳には、好奇心が見えかくれしている。

 あと一押し。

 もうすこし、あおってやらないと。