「お題が美少女だったら、珠洲島(すずしま)先輩、楼音のところに来るんじゃない!?」


「かわいい後輩だともっと確実!借り物競争、そういうのあるもんね~」




 前澤さんと仲のいい2人が口々に言う。


 たしかに前澤さんなら、可能性あるかも。

 どうどうと環先輩のこと、名前で呼んじゃえるくらい積極的だし。

 私なんて、前澤さんにつられて環先輩って呼んでるけど、それも心のなかが限界。


 恋のライバルがクラス1の美少女になるなんて、環先輩にひとめぼれしたときは思いもしなかったなぁ…。




「あ、珠洲島先輩の番来るよ!」


「環先輩、走ってる姿もかっこいい~…!」


「あはは、順位なんて気にしてなさそう」




 あくびをして走り出した環先輩は、他の人たちにどんどん差をつけられていく。

 のんびりお題の紙を取って、マイペースにきょろ…きょろ…とあたりを見る姿まで“らしく”て、思わず口元がゆるんだ。