「希色がいないと、糖分足りないんだけど」
「えっ?」
「いつもチョコくれるでしょ、きみ」
あぁ、そういう意味かぁ…。
たしかに、図書室の眠り王子にひとめぼれしていらい、環先輩がいる曜日に図書室に通って、チョコをさしあげてるけど。
環先輩って、チョコが好きみたいだから。
「本に飽きたわけじゃないなら、なんで図書室来ないの?」
ちらりと、私が持っている本に視線を向けて、環先輩はつんと、口をとがらせる。
すねてるみたいでかわいい…先輩だけど。
たしかに、毎週通ってた私がとつぜん来なくなったら、“チョコの子”でしかなくても、不審がるよね。
「えっと、ごめんなさい…実はここ1ヶ月くらい学校に行ってなくて…」
「…なんで?」
ぱちりと、まばたきをして私に視線をもどす環先輩。
緑色の瞳に見つめられて、心臓を掴まれたようにドキリとする。
なんで、と言われても…。
そう思いながらも、私の頭はあの日の出来事を鮮明に思い出そうとしていた。



