環先輩の助言どおり、一時は保健室登校をした私だけど。

 “保健室に来る生徒が増える”となぞのお叱りをいただいて、私は教室に追い返されてしまった。

 たしかに、この学校って意外と保健室に来る男子が多いんだなぁ、と思ったけど。


 でもただで返されたわけでもなくて、担任の先生が席替えをして、私をいちばんうしろの席にしてくれたりしたので、いまもなんとか通えている。

 ずっと気まずかった前澤(まえざわ)さんも、新たな恋をしているようすで、罪悪感がうすれたし。




「本借りたいんだけど」


「あ、はい」




 (たまき)先輩の代わりに、図書室の受付カウンターに座っている私は、声をかけられて本を受け取った。

 慎重にうごいてあまり物音を立てないようにしているのは、環先輩が私のひざに頭を乗せて眠っているから。