「た、環先輩っ…!」


「一緒に寝たら、きっといい夢見れるよ。たまには希色も、ね?」




 近くで見る環先輩の瞳は、やさしくて、甘くて。

 そのさそいを断れないような、ふしぎな魅力があった。

 とろんとした瞳に見つめられて、意識がとろんとしてくるなんて、いつもならないことだけど。


 環先輩の下りたまぶたを見たら、私に拒否の選択肢はなくなる。




「…はい」


「ん…いーこ」




 うすく開けられた緑色の瞳が、私をまっすぐ見つめる。

 それからまたまぶたが下りて、環先輩の手が私の手を掴んだ。




「おやすみ…いい夢見よーね」


「おやすみ、なさい…」




 環先輩は指を絡めて私の手を握ったまま、穏やかな寝息を立て始める。

 私は環先輩の寝顔を見つめて、とくとくと言う心臓の音を聞きながら。

 いつしか、つられるように眠りへ落ちていた。