【短】きみがいないと、糖分不足。



 ぎゅう、と抱きしめられて、うしろから聞こえるゆるい声に体温を最大まで上げられた。

 ごほうび…。


 口をぱくぱくとうごかして、泳ぐ視線をそのままに。

 ふるえる手を握りこんで、ぎゅっと目をつむった。




「わ、私もっ…」


「うん」


「環、先輩が…っ」


「うん」


「す…好き、です…っ!」




 ちいさすぎて、ささやくような声になってしまったそれが、ちゃんと環先輩に聞こえたのかどうか。

 それは、耳元でささやく声が明かしてくれた。




「ん。今日から、俺の彼女は希色ね」


「っ…!」




 甘い声が注ぎこまれる。

 しびれるようなよろこびが全身を駆け抜けて、私の体から力が抜けた。




「希色って、ほんとにかわいい。…好きだよ」




 ごほうびの言葉が、心に染み渡っていく。

 信じられなくて、夢みたいで、うれしくて…私の目からは、ひとつぶの涙がこぼれた。