ふり返ると、眠そうな目をした(たまき)先輩がゆるくほほえんでいた。

 その姿を見ただけで、ふしぎと体の力が抜ける。




「たっ、環先輩!?お、おはようございますっ」




 1トーンたかくなった前澤(まえざわ)さんの声が聞こえて視線を向けると、彼女はにこっと、頬を赤くして笑っていた。

 私とはぜんぜんちがう、かわいい顔。

 環先輩、前澤さんにも“かわいい”って言うんだろうなぁ…。




「…おはよ」




 反対側から聞こえた環先輩の声は、思いのほかきょとんとしていた。

 顔を見ても、ふしぎそうにぱちぱちとまばたきしている。

 でも前澤さんを見ていたのは短いあいだで、すぐその視線は私に移った。




「迎えに行けなくてごめんね。がんばってえらい」


「えっ」