【短】きみがいないと、糖分不足。

 (ひる)んでしまうけど、動画のとおりにメイクした顔は、多少見れるようになっていて。

 体の内からせり上がってくる緊張を、大丈夫、大丈夫、と目をきつくつむりながら封じこめた。




「いつまでも、逃げてちゃダメ…がんばらなきゃ」




 自分に言い聞かせるようにそう口にして、環先輩とのトーク画面を開く。

[わかりました。ありがとうございます]と返事をしてから、スマホをおでこに当てた。


 …神様。私に勇気をください…!



 家を出る時間が来ると、私はふるえた吐息を吐き出して、ガチャ、と玄関の扉を開ける。




「希色!がんばって。…でも、無理はしないでね」


「お母さん…うん。ありがとう…行ってきます…!」




 お母さんに見送られて家を出た私は、駅に向かって、ながいあいだ電車にゆられ…異変を感じながら、一歩一歩学校に近づいていった。