【短】きみがいないと、糖分不足。

 ううん、そもそも環先輩がここにいること自体信じられない…!

 ほんとに本物??


 まんまるになった目で、じ~っと環先輩を見つめると、環先輩も私を見ながらこっちに歩いてくる。

 だぼっとした白いセーターが、歩くたびに形を変えて、右に左に、大きなしわを作っていた。




「やっぱり、チョコの子。こんなところにいたんだ」


「は、はい…」




 “チョコの子”。

 最後の登校日だった体育祭の記憶がフラッシュバックする。

 そのとたん、胸が重くなって、目をそらした。




「わざわざ遠くの図書館まで来てるの?」


「えっ?いえ、私の家、こっちのほうなので…」


「ふぅん」




 ゆるくあいづちを打つ声と共に、となりから、がが、とイスを引く音がする。

 びっくりして目を向ければ、環先輩は私のとなりに腰を落としていた。