めんどくさいなぁ、と思いながらバーコードを読みこんで本を返すと、女の子は『あ、あのっ…』と弱々しく声をかけてきた。




『よかったらこれ、どうぞ…!』


『…チョコ?』


『は、はいっ…』




 それが、あの子との出会い。

 よく図書室に来るあの子は、本を借りるたびにチョコをくれた。

 別に俺は甘いものが好きなわけじゃなくて、頭を使うときとか疲れたときに甘いものを食べるといいから、チョコをよく食べるだけなんだけど。


 あの子の好意は、いやじゃなかった。

 身近にいる“女性”とはぜんぜんちがう、気弱でやさしい子。


 口元をゆるめていると、ティロン♪と通知が来る。




「え…」


[会議に使う大事な資料忘れたから病院まで持ってきて、学校行く前に!]