「は、はいっ…!」




 あぁ、声が上擦(うわず)っちゃった…っ。

 頬の熱を感じながら、もっと環先輩に近づくと、黒い手袋に包まれた手でぽんぽんと頭をなでられる。




「ん、かわいい、かわいい。がんばったね」


「たっ、環先輩…っ!」


「いい気分だよ。…ふぁ…」




 私にほほえみかけたあと、環先輩は口を押さえてあくびをした。




「…あの子、かわいいな…でも彼氏持ちか…」


「…ねぇ見て、あそこの子イケメンすぎない?…」


「…美男美女でうらやましい~…」




 ひそひそと周りを行き交うひとのはなし声が聞こえてきて、芸能人でもいたのかな、と思う。

 環先輩は眠そうな目を周りに向けると、まぶたを落としながら私の手を取った。




「えっ…!?」


「かわいい後輩は、俺が守ってあげないと。行くよ」


「は、はいっ…」