それに、クラスメイトと顔を合わせたくない私でも通えるくらい、ここには野いちご学園の生徒が来ない。

 数駅遠くからの電車通学は友だちづくりには向かないけど、不登校になったときには助かるんだって、最近知った。


 また図書館の扉が開く音を聞きながら、ぺら…ぺら…とページをめくって、気づいたら3ぶんの1ほど読んでいたころ。




「あ、きみ」




 と、不意に近くで声がした。

 なんだか聞いたことがあるような声だなぁ、と思って、メガネを押し上げながら視線を向けると、そこにはなんと、緑色の垂れ目があって。

 明るい紫色の髪が、今日もさわり心地よさそうにふわふわしていた。




(たまき)、先輩…?」




 ぱちぱちとまばたきをして、思わず心のなかではおなじみの名前を呼ぶ。

 それから、しまったと口を押さえた。

 ぜんぜん仲良くないのに、名前で呼んじゃった…!