【短】きみがいないと、糖分不足。



「ひゃぁっ…!」





 おどろきに押し出された声が、思いのほか図書館によくひびいて、目をぱっちり開けながら両手で口を押さえる。

 中腰になって私に顔を寄せていた環先輩は、横目に視線を合わせると、片手で私の頭を抱きかかえた。




「ごめんなさ~い」




 私の代わりに周りへあやまる声を聞いて、もうしわけなく思うよゆうもない。


 いま、私史上いちばん環先輩に近くないかな…!?

 ううん、近いよね、絶対…!


 だって、私の顔、環先輩のセーターにふれてるもの…!

 環先輩のにおいでいっぱいだもの…!


 まるで、抱きしめられてるみたいに…っ!




「…ね、ほら。目、開けてたほうがいいよ」


「は、はいっ…」




 ちいさな声で返事をして、イスに腰を落ちつける環先輩のうごきを目で追う。