「んーと…あ、あった。やっぱりポッケに入ったまんまだったなぁ」
そんなのんびりとした声が聞こえたあと、ゴムで髪を結ばれる感触がした。
「はい、こっち向いて」
「は、はい…」
「んー…」
じぃ、と正面から環先輩に見つめられて、ぎゅっと目をつむる。
顔、火照ってるかも…っ。
「かわいいね」
口角が上がっているような、やわらかい声とともに頭をなでられて、「ひゃっ」と短い悲鳴がもれた。
「…ねぇ、そうやって目、つむってたらさ。俺になにされるかわからなくて、」
ふしぎそうな声がとぎれて、無意識に耳を澄ませてしまう。
そんななか、不意に耳元で…。
「こわくない?」
と、ささやく声がした。