あらためてことの経緯を思い出しても、胸が重い。
あのときは環先輩に手をつながれて、パニックになっちゃって…。
ぜんぜん周りが見えてなかった。
「ねぇ、聞いてる?なんで、って聞いたんだけど」
のんびりとした環先輩の声に意識をもどされて、「あっ」と声がもれる。
「は、はい、聞いてます…その…学校には、行きづらくて…」
目をそらしながら答えると、「ふぅん」とふしぎそうなあいづちが聞こえた。
「数学の先生が苦手、とか?」
「えっ?」
「俺、あの先生苦手なんだよね。なんていうか、気が強くって…母さんたちに似てるから」
環先輩は目をつむりながら、ため息混じりにぐちをこぼす。
環先輩のご家族って、気が強いんだ…。
みんな、環先輩みたいにゆるい感じなのかと思ってた。