その一言で、完全にダメになった。
体温の上昇が止まらなくて、まっかになった顔をうつむけて、ただ走る。
ゴールまでがうんとながくて、右足をまえに出しているのか、左足をまえに出しているのか、ぜんぜんわからなかった。
転ばずに走れたのが、もう奇跡だったと思う。
「お題を見せてください」
「はい」
ゴールしたあと、係りの人が環先輩からお題の紙を受け取る。
なんて、書かれてたんだろう…。
「“チョコ”…失礼ですが、チョコは持っていますか?」
「えっ…い、いえっ…!」
「でもこの子、いつも俺にチョコくれるよ。ね?」
「はっ、はい…」
ね、とふり向かれて、ドキッとしながらうなずいた。
手はまだ、つながれたまま。



