【短】きみがいないと、糖分不足。

 それらが向けられていたのは、なぜか…私、で。





「えっ…?」


「席もどりたいから、はやく」





 お題の紙を持った手で口をおおって、ふぁ、とあくびをひとつ。

 びっくりして動けずにいると、しびれを切らしたように手を掴んでひっぱり起こされて、じゅわっと頬が熱くなった。

 ひっぱられるまま足を動かしながら、ゆれる紫色の髪を、白い体操着におおわれた背中を見て、えっ、えっ、と心のなかで繰り返す。


 わ、私…っ!?




「あ、あの、なんで…っ」




 そう聞いた声は上擦(うわず)ってふるえていて、緊張しているのがバレバレだった。

 環先輩は私をひっぱってゆるく走ったまま答える。




「きみしかいないから」


「っ…!?」