っと、いけない。

 こんなところ、だれかに見られたら私も環先輩のこと好きだってバレちゃう。


 両手で口元をかくしてちらちらと周りを見ると、だれもこっちを見てなさそうで、ほっとした。

 グラウンド中央の環先輩に視線をもどしたとき、私の目はおどろきで丸くなる。

 環先輩、こっちに来てる…!?




「きゃーっ、珠洲島先輩、ほんとにこっち来てない!?」


「楼音呼ばれるよ、絶対!」


「え~っ、そうかな?」




 前澤さんの声には期待がにじんでいる。

 私はちいさくなって、環先輩と前澤さんを何度も見比べた。

 お題、なんだったんだろう…。


 好きなひと、とかじゃないといいなぁ…。




「来て」





 眠そうな緑色の垂れ目が、視線を落とす。

 ひじをまげた腕が、ゆるく伸ばされて。

 前澤さんたちがふり返った。