「は?何、この衣装…」
「史緒、オレにも説明なかったよな?」
そう言って、げんなりとした表情を浮かべているのは、千歳と伊緒くんだ。
黒涼祭まで1週間をきったある日の放課後。
当日の準備を進めるため、生徒会室に集まった私達は、史緒くんが仕上げたというカフェで着る衣装を見せられていた。
こ、これは…またすごいクオリティ…。
私でさえ苦笑いを浮かべてしまうそれは、いわゆるメイド服というやつで。
可愛らしいフリルのスカートに、カチューシャ、リボンまでかなり凝って作られている。
「えー。いいじゃん。千歳も伊緒も絶対似合うんだし。ま、もちろん、オレも。つか、男子校なんだからこのくらいしないと集客率見込めないっしょ」
史緒くんは、2人を交互に見つめ、「それに、もう他の衣装作る時間ないしー」と不満げに口を尖らせている。
「史緒先輩、史緒先輩…!オレは、ばっちこいっすよ!」
「お前は、ガタい良すぎて、あんまり可愛くならなさそうだからなぁ…」
「そりゃ、千歳先輩たちよりは可愛くならないとは思いますけど〜…」
横目でチラリとやる気満々の琥太郎くんを見据え、やれやれといった感じでため息をつく史緒くん。