「実は私、今から琥太郎くんの家に行く途中で迷っちゃって……。どうしようかなって考えてたところだったの」
アハハと苦笑いを浮かべて杏花ちゃんを見つめると、彼女は次の瞬間、ハッとしたような表情を浮かべた。
「もしかして立栞さんですか!?」
私の名前を口にするものだから思わずコクコクと思い切り首をたてに振る。
よかった……!私のこと知っててくれたんだ。
「うん、そう!はじめまして。白浪女学院2年の西藤立栞です。今はトレードで黒涼高校に通ってるけどね」
「あ、はじめまして……。栄(さかえ)中学1年の榊 杏花です。お兄ちゃんがいつもお世話になってます」
栄中学はこのあたりの校区の中学校だ。
それにしても、中学1年生とは思えないくらいしっかりした杏花ちゃんの挨拶に私は舌を巻く。
天真爛漫な琥太郎くんとは対象的にクールで大人びた印象の杏花ちゃん。
兄妹でこうも性格が違うのかと驚いてしまった。
「あの、立栞さん。よかったら家まで一緒に行きます……?迷ってたんですよね?すみません、ちょっと道がわかりにくくて」
「本当!?助かるよ〜。こっちこそ、迷惑かけちゃってゴメンね。杏花ちゃんが良ければ一緒に行ってもらえると嬉しいな」



